【第四章】昏き影、嗤う魔女、集う光
第四十一話 その囁きは闇の底から

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 突然、上空の祇徒たちが悲鳴を上げ始めた。
「なによ、あれ?」
 天を振り仰いだマリーシアの唇から驚声が漏れる。
 そこには、光り輝く鎖によって捕縛されている祇徒たちの姿があった。
 咒紋の鎖だ。
 白熱する魔力の鎖が、逃げ出そうとしていた祇徒たちを尽(ことごと)く捕らえ、彼らの胴を雁字搦(がんじがら)めに締め上げている。
「拘束されてる? 誰がやってるの……?」
 呟いた直後、肌が粟立つほどの鬼気を覚えたマリーシアは、地上に視線を戻した。
 ――来る。
 まるで、天地を塗り潰すかのごとき傲慢さを伴った気配が迫っている。
「気をしっかり持ってなさいよ!」
 ぎゅっ、とエリウスを抱く腕の力を強くした。
「もうだいじょうぶだよ」
 指先まで強張ったマリーシアの手に、彼の手がそっと重ねられる。
「ジェド……、起きれる?」
 その声に反応してよろよろと起き上がったジェドが、主の懐へ転がり込んできた。
「じっとしてなさい!」
 腕の中から出ようとするエリウスを叱りつけるように叫んだその時、マリーシアは見た。
 家々の向こうから迫り来る力の正体を。
 強大な、咒力場。
 それは、世界を塗り替える紋(ことば)。
 爆発的な勢いで膨れ上がった魔法円が、空を埋め、大地に拡がり、家々や田畑を侵蝕するように上書きされてゆく。
「立体法陣……!?」
 二人の周囲を、咒紋によって綴られた発動式が奔り抜けてゆく。

 昏冥の淵に生まれし者どもよ――
 黒鋼の贄殿(にえどの)に入(い)り、我に永劫の服従を誓え――
 捧げられし血は誓いにして、肉は酬(むく)いである――
 調伏の証を身躯に刻み、凶猛なる闇の尖兵となれ――

 周囲を流れてゆく発動式を読み取ると、そのような意味を持った咒紋が記述されていることがわかった。
 ――降魔の咒法? こんなに大規模な立体法陣を展開して、なにを降ろすつもりなの?
 異界から、聳(そび)え立つ山塊のような巨獣でも呼び出すつもりなのかと思えた。
 だが、走り読みした発動式の中に、異界との連結路を開く文言は含まれていない。
 ――まさか!?
 はっ、として空を見上げると、祇徒たちを締め上げる咒紋の光鎖が一斉に烈しい光を放った。
 光鎖から湧き上がった黒い焔が、瞬時に彼らの全身を包み込む。
 ――この場にいるすべての祇徒を利用するつもり?
 彼女の想像を肯定するかのように、仄暗い鬼火と化した祇徒たちが、地上へ向って降り注いだ。

       †

「赤くない!? 今度は黒い火の玉が落ちてくるよ!?」
「色なんか気にしてる場合かよ! とにかく逃げろ!」
 オレスとユータは一目散に逃げ出した。
 しかし、意味がわからない。
 光の鎖に締め上げられた化け物たちが、黒い火の玉に変わったのだ。
 この現象も、魔女が操る魔法によって引き起こされたものなんだろうか?
 今さらになって、早くこの場から離れておくべきだったと悔やんだが、先に立つ後悔など存在しない。茫然としていた自分が悪いのだ。
「後ろから追ってきてる!?」
「なんだと!?」
 振り向くと、地表すれすれまで落下した黒い火の玉が、不自然に軌道を変えてこちらへ飛んでくるのが目に入った。
「伏せろ!」
 頭を抱えながら、前方に身を投げ出した。固い地面の感触が胸と腹を打ち、一瞬息が詰まる。ユータも同じ姿勢で地に伏せたことを目の端で確認した瞬間、頭上を火の玉が通過した。
「行ったか?」
 視線を上げて、火の玉が路地の向こうへ去ったのを見送ってから、身体を起こした。
「早く起きろよ」
 腰が抜けているのか、地に這い蹲ったまま動けずにいるユータへ手を貸してやる。 
「オ、オレス……」
 こちらを見つめるユータの眼が、ひどく怯えていた。
「どうした?」
 オレスは訝(いぶか)るように尋ねたが、彼は口をぱくぱくと動かし続けるだけで、まともに声を出せないようだった。
「ん?」
 急に、足下が暗くなった。
「う、上……」
 ユータが呻くように呟いた。全身の毛が逆立つ。
「嘘だろ!?」
 首を上に向けると、先ほどやり過ごしたのと同じような火の玉が、二人の頭上で静止しているのが見えた。
「オレス!」
「お前は逃げろ!」
 ユータを突き飛ばしていた。
 火の玉が、落ちてくる。
「うおおおおおっ!」
 目に見えるものが、黒≠セけになった。
 全身が、黒い焔によって灼かれているのだ。
 手足を無闇やたらに振り回しても、消えない。
 火。焔。
「オレスーッ!」
 ユータの叫び声が聞こえた。
 答えてやることは、できそうにない。
「ああああああっ!」
 大声で喚きながら、のた打ち回る。
 熱い、寒い、熱い、冷たい、痛い、灼ける、苦しい――
 自分はこのまま、死んでいくんだと思えた。
 死ぬ――?
 死ぬって、なんだ……?
 あの世に、逝くのか?
 俺は、兄貴と同じところに、逝くのだろうか?
 兄貴は、あの世にいるのか?
 でも、もし兄が生きて還ってきたら、自分とはすれ違いになってしまうかもしれない。
 今度は、俺の葬式が必要になるのか。
 親父とおふくろには、申し訳ないと思う。
 俺は、もう終わりみたいだ――
 意識が、闇の中へ落ちてゆくのを感じた。
 なにもない、ただ真っ暗なだけのものと溶け合い、一つになる。
 それが、死か?

 そうだ――

 突然、闇の底から声が響いてきた。

 直にお前は死ぬ。
 死ぬのだ。

 ――誰だ?

 オレスは、声≠ェやってきた方向へ叫んだ。

 ――を、望むか?

 ――なんだって? よく聞こえねえよ。

 生を、望むか?

 ――まだ生きたいかって、訊いてんのか?
 ――そんなの、決まってんだろ。
 ――やりたいことが一杯あったんだ。
 ――いつかマナちゃんに告白するつもりだったし、いつも味噌っかす扱いしやがる親父に、俺のことを認めさせなきゃならねえんだ。
 ――いや、それは親父だけじゃねえ。
 ――村の大人は、みんなそうだ。
 ――俺と顔を合わせた途端、道端に転がる汚物でも見るような眼をして蔑みやがって……。
 ――あいつら、意地でも俺のことを人間扱いする気がねえんだ。
 ――けどよ、いつか絶対に認めさせてやる。
 ――それが、俺の意地だ。

 では、生を望むのだな。

 ――ああ?
 ――生きてなきゃそれができねえってんじゃ、そういうことになるな。
 ――そうだ。
 ――俺はまだ、死ぬわけにはいかねえ。

 ならば、従え。

 ――俺に言うことを聞けってのか?
 ――嫌だね。
 ――俺は誰の指図も受けねえ。

 従え。

 ――嫌だって言っただろ。

 従え。

 ――嫌なこった。

 従え。

 ――しつけえな。
 ――どうしても俺を従わせたいんなら、力づくでやってみろってんだ。

 いいだろう。

 ――あ?
 ――なにをする気だ?

 全身に、黒い焔に包まれたときの苦しみが甦った。

 ――や――
 ――やめろ……!

 あ、熱い、灼ける、苦しい!

 ――し、死ぬ!
 ――死ぬ! 死ぬ……!

 死ね。

 ――やめろよ!

 死ね。

 ――やめてくれ!

 死ね。

 ――やめてくれって!

 ならば従え。

 ――従えば、やめてくれるのか……?

 そうだ、従え。

 ――従う!
 ――従うよ!
 ――従うからやめてくれ!

 いいだろう。

 オレスの全身を襲っていた黒焔の責め苦が消えた。

 ――助かった……。
 ――それで、なにをすればいいんだ?

 殺せ。

 ――え?

 殺せ。

 ――殺せって、誰を殺すんだよ?

 この地に生きる者、そのすべてを。

 ――みんな……、みんな殺すって言うのか?
 ――そりゃいくらなんでもやり過ぎだ!
 ――確かに、この村にはいけ好かねえやつらも一杯いるけどよ。全員殺すっていうのは、あんまりだ!

 ならば、お前は死ぬのだな。

 再び、黒焔の責め苦が甦る。

 ――や、やめてくれ! やめてくれよ! それ以上やられたら本当に死んじまう!

 では、従うか?

 ――わかった! わかったよ!
 ――でも、友達と家族だけは見逃してもいいだろ?
 ――アストとユータはいいやつだし、マナちゃんを傷つけるような真似はできねえよ。親父だって、たまには一緒に釣りに行ったりして、仲がいい時だってあるし。

 例外は認めぬ。
 すべて、殺せ。

 ――どうしてだよ!?

 いつまでも子供みたいなことを言うのはやめろ!

 突然、目の前に父親の姿が現れた。

 ――なんだ?
 ――どうして親父が、ここにいるんだ?

 夢か、幻でも見ているのだろうか。

 これは、真実の記憶だ――と、声≠ェ告げた。

 真実の記憶?
 ……そうだ。
 親父は、そう言って俺を殴り飛ばしたんだ。

 兄貴の葬式――

 空の棺を前にして泣き崩れる母の姿も見える。

 ――おふくろ、泣くなよ……。
 ――兄貴は、死んだって決まったわけじゃねえんだ。
 ――村の英雄様が、そう簡単にくたばるわけがねえ。

 棺を下ろしてくれ。

 兄の棺が、闇の底へ沈められてゆく。

 ――親父! こんな嘘っぱちの葬式はやめろって言っただろ!
 ――みんなで兄貴を死んだことにするから、おふくろだって泣いて……!
 ――許さねえぞ!
 ――このクソ親父! 絶対に許さねえ!
 ――おふくろ! こんな血も涙もないやつ放っといて、うちに帰ろうぜ!

 だが、父に肩を抱かれた母は、オレスを置いたまま闇の向こうへ歩き去ってしまった。

 ――おふくろ……!? 待ってくれよ!

 …………。

 微かにこちらを振り返った母の瞳は、ぞっとするほど冷たい色をしていた。

 ――嘘だろ?
 ――おふくろまで、あんな目をするのか……?
 ――他人と、同じじゃないか……。

 消えろ。クズめ。

 ――俺の顔を見るたびにそう言ってくる連中と、同じ目だった。
 ――兄貴を見るときは、あんな目をしたことなんかないのに。
 ――ということは……。
 ――おふくろは、いなくなったのが兄貴だったから、泣いてたのか?
 ――あれが俺の葬式だったら、泣いてもくれないのかよ?
 ――出来がいい兄貴じゃなくて、厄介者の俺が界瘴に呑まれればよかったのにって。
 ――葬式で泣いている間、ずっとそう思ってたんだな?
 ――そうか……。そうかよ……。

 あははははっ!

 サーシャが、腹を抱えながら大笑いしている。

 ――このやろう! 人が落ち込んでる姿が、そんなに面白いのかよ!

 この悪ガキ! 粗大ゴミ! ボコボコにされちゃえ!

 ――黙れこの胸なし女!

 背を向けて逃げてゆくサーシャを追いかけようとしたが、

 ――おわっ!?

 横合いから飛び出してきた人影にぶつかって、派手に転んだ。

 ――いてててて、ちくしょう!

 口中に罵りながら身体を起こすと、恨めしげにこちらを睨んでいるユータと、目が合った。

 ――ユータ! いつもいつも間が悪いところで邪魔しやがって!

 オレスが邪魔したんだろ!

 ――なんだと?

 なにもかも全部オレスが悪いんだ!

 ――てめえ!

 オレスは激怒した。

 ――確かに、お前のことはしょっちゅうからかったり、頭を小突いたりしてるけどよ! いじめられてたのを助けてやったことだってあるだろ!?
 ――それを! なにもかも全部って言われなきゃならねえほど、俺は悪い人間なのかよ!

 そうだそうだ!
 オレスが悪い!

 チャラムたちが、声を揃えて野次を飛ばしている。

 ――お前ら! 本心ではずっとそう思っていやがったんだな!?
 ――ふざけやがって! なんでも俺のせいにするんじゃねえ!

 自覚が足りないようだな。

 その声を耳にした瞬間、怒りで熱くなった頭が急速に冷えて行くのを感じた。

 ――兄貴……? 兄貴なのか……?

 声が聞こえてきた方向へ振り返ると、兄の姿が見えた。

 ――兄貴! やっぱり生きてたんだな!

 心配してたんだぜ。今までどこにいたんだよ。
 そう続けるつもりだった言葉は、兄の眼差しに遮られて喉の奥に沈んでいった。

 少しは尻拭いに追われる俺の苦労も知ってくれ。

 兄の声は冷たく、その瞳には、愚弟への明らかな侮蔑が篭められていた。
 
 絶対に許さねえぞ! 覚悟はできてんだろうな!

 新前の連中も怒っている。

 ――どうしてみんな、そんな眼をするんだよ!? 

 オレスは俯いた。
 やはり俺は、汚物なのか。
 そんなはずがないと、心の底から叫びたかった。
 兄に笑われぬような男になろうと、決意したのだ。
 でも、皆は認めてくれない。
 やはり俺は、汚物なのか。

 道端に転がる汚物。

 そうだ。
 そうなのだろう。

 汚物。

 俺は、汚物――

 顔を上げると、心配そうにこちらを覗きこんでいるマナミの姿が見えた。
 ――マナちゃん……? 無事だったのか……?
 声をかけると、マナミはおずおずとした様子で肯きを返してくれた。
 ――アストのやつはどうしたんだ?
 マナミの首が微かに左右へ振られる。
 ――いないのか? 肝心なときに頼りにならねえやつだな。まぁでも、マナちゃんは俺のことを頼りにしてくれていいんだぜ?
 軽く笑いかけて見せたのだが、マナミは不思議そうな顔をしながら小首を傾げた。

 オレスさんを? どうして?

 ――どうしてって、そりゃあ……。

 あんたを頼りにするくらいなら、オルグさんを頼りにした方が何倍もいいだろ!

 いつの間にか戻ってきたサーシャが、マナミの腕を引いてどこかへ連れて行こうとしていた。

 ――待てよバカサーシャ! マナちゃんのことは俺が守るんだ!

 若くして偉大な英雄の再来と称えられている優秀な兄と、若くして早くも村の厄介者の粗大ゴミと成り果てた愚かな弟。どっちが頼りになるかなんて、うちのリリにだってわかるよ!

 ――うるせえ! お前は、自分ちのバカ猫の面倒だけを見てりゃいいんだ!

 サーシャがマナミを連れて行った先には、アストがいた。
 その隣には、彼の家に寄宿しているヴェルトリア人の少女もいる。
 ――お前! 今さらノコノコ現れやがって! どこをほっつき歩いてやがったんだ!
 オレスは叫んだが、アストには聞こえていないようだった。
 ……いや、聞こえていないはずはない。
 俺を、無視していやがるんだ。
 ――アスト! ちょっとくらい兄貴に認められたからって、調子に乗ってんじゃねえぞ!
 ――おい! 聞いてんのかよ!
 いくら罵ってもこちらを見ようとしないアストは、マナミや、ヴェルトリアの少女と手を繋いで、闇の向こうへ消えてしまった。
 憎たらしげに舌を出したサーシャが、すぐに身を翻して後を追ってゆく。
 ――ひでえよ……。みんな、ひでえよ……。
 みんな、友達じゃなかったのかよ?
 アストのやつまで、俺を裏切るのか?
 いつの間にか金髪さんの彼女を作ってやがったことも腹立たしいが、いつまでもマナちゃんにベタベタとくっつきやがって!
 前から、おかしいと思っていた。
 兄妹にしては、仲が良すぎるのだ。
 まさか、あの野郎――
 マナちゃんに手を出したりしてねえだろうな!?
 ……いや、待て、落ち着け。
 あいつに人並みの良心があるなら、そんな不道徳な真似はしないだろう。
 ――でも、あいつに、良心なんてあるのか?
 あいつは、俺の兄貴を見殺しにした、卑怯な男だ。
 ああそうだ!
 忘れちゃいねえぞ!
 あいつは、自分だけ御神火台の上に這い上がって、界瘴に呑まれる兄貴を助けようともしなかったやつじゃねえか!
 それをなんだ?
 兄貴のことは、「よくわからない」とかほざいてやがったよな? ああ?
 それでよく俺の親友ヅラができたもんだよなぁ?
 サーシャと赤ん坊を助けたくらいじゃ騙されねえぞ! この偽善者め!
 だいたい兄貴も兄貴だ!
 なんであんな腑抜け野郎を認めて、実の弟である俺を認めようとしねえんだよ!? 
 糞が! 糞が! 糞が!
 糞糞糞糞糞っ!
 兄貴が頼りになる?
 アストが頼りになる?
 マナちゃんは、あんな糞どものことを頼りにしてるのかよ?
 俺のことは、眼中にないってのかよ!?

 俺がこんなに想っているのに!

 みんな、理不尽だ。
 ……もう、いいや。
 村のことなんか、どうでもいい。
 嫌なやつらばっかりだ。
 みんな、死んでしまえばいいのに。
 死ね。
 みんな、死ね。
 俺を見くびるやつは死ね。無視するやつは死ね。馬鹿にするやつは死ね。認めないやつは死ね。俺より力があるやつも死ね。度胸があるやつも死ね。賢いやつも死ね。見てくれがいいやつも死ね。人望があるやつも死ね。要領がいいやつも死ね。偉そうにしているやつも死ね――
 みんな、死ね。
 死んじまえ。

 では、殺せ。

 再び、闇の底から声≠ェ聞こえてきた。

 ――ああ、お前の言うとおりだ。
 ――俺、殺すよ。
 ――みんな、殺す。

 いいだろう。
 殺せ。

 殺すよ。殺せ。殺すさ。殺せ。殺せばいいんだろ。殺せ。みんな、友達だったけど。殺せ。殺せばいいんだろ。そうだ、殺せ。殺すよ。殺せ。きっとわかってくれるさ。そうだ。友達だもんな。そうだ、殺せ。ユータを殺そう。アストを殺そう。サーシャもマナちゃんも殺して、親父もおふくろも、みんな殺そう。そうだ、殺せ。

 殺すべきか?
 殺すべきだ。 

 その言葉とともに、体内に火が宿った。
 熱くて冷たい火。焔。
 血と肉と骨が灼け、そして凍える。
 だが、心地よい。
 この火は、力なのだ。
 ……なんだ、簡単なことじゃないか。
 殺せる。
 この力があれば、殺せる。
 じゃあ殺そう。今すぐ殺そう。

 俺は、殺す。
 みんなを、殺す――

 決意を定めた直後、ユータの悲鳴が聞こえたような気がした。



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